SAPAとその影響
昨年初め、韓国でSerious Accident Punishment Act(SAPA)が可決されました。この法律は、所有者と管理者の両方に責任を持たせることで、職場での重大な事故を回避することを目的としています。この法律の元となっているのが、米国の1970年労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act (OSHA) of 1970)と英国の1974年労働安全衛生法(Health and Safety at Work etc Act 1974)で、いずれも安全な職場を維持する全責任を雇用者に負わせています。
SAPAの発効が2022年1月27日に迫り、企業は健康・安全管理システムやその他の職場環境の事前防止策の導入を急いでいます。所有者および管理者が職務を怠っていることが判明した場合、厳しい処罰の対象となるためです。死亡者の有無に応じて、最長7年の懲役または最高90万米ドルの罰金が科される可能性があります。
現在、韓国市場全体がSAPAで騒然となっています。最も大きな打撃を受ける業界の1つである建設業界では、多くの所有者が役職から退き、代わりに専門の管理者を任命しています。また、大企業は、最高安全責任者を立て、そうした重大な問題に対処する専任の安全チームを創設するという大規模な組織変更を行っています。しかし、すべての組織が安全管理者を採用できるほど、ましてや安全チームを創設できるほど十分なリソースを持っている訳ではないため、中小企業に混乱とパニックが広がっています。
テクノロジーを活用
多くの企業が、AIとイメージングテクノロジーを活用して、職場の安全環境のリスクとギャップに対処しています。中央大学校(CAU)のPark Chan-sik教授は、研究者として一貫して建設業の安全性と危険防止について提唱してきました。Park教授は、建設現場や作業員の監視を自動化できる「Smart Construction Worker Safety Management System(iSafe)」の導入を推進しています。そうしたシステムを導入することで、建設における事故の最大80%を防止することができます。
Park教授は次のように述べています。「Occupational Safety and Health Agencyの2018年の統計によると、毎年、建設現場で485人が死亡しています。1日平均で1.5人です。この国に35万ある小規模な建設現場は、依然として未整備で、高齢の労働者にとって安全上の盲点となっています。政府がこうした現場をすべて検査することはできないため、スマートテクノロジーが必要なのです。」
「このシステムは、現場の3Dレプリカやデジタルツインと呼ばれるものを作成するAIベースのビジュアルイメージングテクノロジーを使用しています。そして現場に位置センサー、生体認証センサー、環境センサーを設置します。また、リスクデータを学習し、現場の状況を分析し、潜在的に危険な部分に事前にフラグを立て、規制違反がないか判断するAIも開発中です。」
「ソリューションとしては、Beamoのようなデジタルソリューションが不可欠でしょう。そうすればこうしたすべてのコンポーネントを連動させ、違反者を罰するのではなく、事故を防ぐ現実的なソリューションを提供してくれます。」
中央大学校 教授, Park Chan-sik
「実際のところ、事故の40%は事前に検知できるものです。さらに現場のリモート管理にBeamoを使用することで、これまで検出できなかった残りの60%の事故も防止することができます。」
「また、Beamoを教育に使用することもできます。これまでは実際には誰も安全マニュアルを読んでいなかったため、情報提供が常に問題になっていました。しかし、Beamoを使用すれば、労働者はこうした情報や安全性に関する資料に直接アクセスすることができます。」
健康と安全に貢献するデジタルツイン
CAUは現在、Beamoと協力して、このソリューションを使用して解体プロジェクトの計画と管理を行っています。建物やインフラの解体には、多くの準備が必要です。Beamoを使用することで、解体チームは現場の状況をキャプチャしてリモートで進捗を監視し、各段階で検査を文書化し、チームメンバーと連携することができます。デジタルツインの用途は、解体プロジェクトだけではなく、一般的な建設プロジェクトにも応用できます。最終的に、CAUはAIソリューションとBeamoのプラットフォームを統合することを検討しています。
Beamoのデジタルツインソリューションを使用することで、企業は健康・安全に関する手順や手続きをアップロードしてコンテキスト化し、現場の危険性を適切に文書化してタグ付けし、労働者が現場に足を踏み入れる前にリモートでトレーニングを提供することができます。このようにすることで、従業員は、建設現場、発電所、製造工場など、潜在的に危険な場所に入る前に、確実に十分な知識と設備を備えることができます。
また企業は、デジタルツインを非常にインタラクティブな没入型の包括的な職場情報管理ツールとして活用することで、労働環境と安全対策を証拠としてきちんと記録するようになっています。これは特に訴訟時に役に立ち、職場の忠実度の高いデジタルツインを、労働者を保護し、事故を防止するために適切な措置が講じられていたことを示す具体的な証拠として法廷で提示することができます。
「新しい健康・安全チームの採用に苦労している企業で、既存のリソースをエキスパートとして活用し、健康と安全に関するトレーニング、リモート監視、進捗追跡にデジタルツインを役立てることができます。何より素晴らしいのは、Beamoのソリューションを使用すれば誰でもデジタルツインを簡単に作成できるということです。スマートフォンと360度カメラさえあれば、数分で現場をキャプチャできます。」
Beamo責任者, Naresh Parshotam
中央大学校について| www.cau.ac.kr
中央大学校(CAU)は、3万人の学生と982人の教員を抱える私立大学です。10の学部と16の大学院で構成されています。韓国のソウルとアンソン(安城)で2つのキャンパスを運営しています。韓国教育省の認定を受けたCAUは、ロースクール、グローバルMBAプログラム、医学学校を含む、幅広い学士、修士、博士課程を提供しています。