稲葉斉氏が、ファシリティーマネージャー時代に直面した最大の課題と、それを克服するための解決策について語る。
Q:ファシリティマネージャーを務めていた当時、何が最大の課題でしたか?
稲葉氏:私はデータセンターや通信ビルの構築や運用に長年携わってきましたが、現場調査の実施方法には改善の余地があると思っていました。また、社内関連部署や社外ビジネスパートナーとのコミュニケーションや調整にも、時間や手間がかかっていました。ですので、ワークフローの変革や業務効率の改善を実現してくれるアイデアやツールを、常に探し求めていました。
Q:現場調査のプロセスでは、どのような点に特に課題を感じていたのでしょうか?
稲葉氏:現場調査のプロセスは、前日に計画を確認するところから始まります。そして実際に現場を訪れ、自分の目で状況を確認し、詳細をメモに書き留めながら写真に収めていきます。それが終わると、持ち帰ったデータを編集し、報告書にまとめます。現場で撮影した大量の写真を選んでダウンロードしたり加工したりして、それを報告書に添付し、説明を追加していくといった営みは、非常に骨の折れる作業でした。当然、途方もない時間がかかります。大規模な現場調査の場合は、その報告書を取りまとめるだけでも丸1日、あるいは2日ほどかかることもありました。このような報告書は、国内外のさまざまな拠点にいる社内外の関係者とのコミュニケーションのために使っていました。自分たちの意図を関係者全員にわかりやすく伝える必要がありますが、テキストのみのコミュニケーションでは難しいからです。また、収集した調査情報を整理・集約する特定のシステムもありませんでした。したがって大抵の場合、現場調査のたびに、いちいちこうした作業をほぼゼロの状態から始めなければならなかったのです。
Q:現場調査に対して、どのようなビジョンを持っていたのでしょうか?
稲葉氏:私は、当社の全ての施設の屋内3Dビューを作成したいと考えていました。そのため3iの方に初めてお会いしたときには、実はすでに自社内でプロトタイプの作成に着手していました。しかし3iの製品は、まさに私たちがイメージしていた通りのものでした。私たちが作成したプロトタイプでは建物の屋内空間の画像がうまくつながらなかったのですが、3iのサービスでは既に完ぺきな形でその点も実現されていたのです。3iのソリューションなら、まるで実際に施設に足を運び、廊下を通って部屋に入り、すべての機器を確認しているかのような体験をすることができます。このソリューションを導入することで、現場への訪問や出張を最小限に抑えることができ、時間とコストの大幅な節約が実現されたのです。報告書の作成やさまざまなチームとのコミュニケーションも、ずっと簡単かつ素早く行えるようになりました。「現場への仮想訪問」を関係者で一緒に行い、問題やタスクを相手に伝えるだけでいいのですから。さらに、収集した調査情報をデータベースに一元的に保管し、視覚的に整理できるようになりました。これにより、過去に収集した情報に基づいた現場調査が可能となることで、業務効率化が進んだだけでなく、現場調査の情報を組織内で水平展開したり、今後に引き継いだりする際にも非常に有用でした。またコロナの時代になり、データセンターのセールスの現場においても活用するようになりました。お客様へ現場で直接ご説明することが困難になったため、リモートでのセールス活動が必要になったからです。Beamoはこのリモートでのセールスにおいても非常に活躍しており、活用の場が広がっています。
Q:建物設備の運用効率化において、大きな飛躍を遂げるための次のステップとはどのようなものとお考えでしょうか?
稲葉氏: 建物設備のオペレーションにおいて完全なデジタル化と自動化を実現し、最小限の人的リソースで維持運用が出来るようになれば、世界が一変するのではないでしょうか。このビジョンを実現するためには、デジタルツインと実世界との双方向のインタラクションを可能にすることが必要でしょう。物理的な施設の関連情報をリアルタイムでデジタルツインに取り込む一方、オペレーション関係者がデジタルツイン内で操作した内容を、時にドローンやロボットを経由して実世界にフィードバックが出来るという世界ですね。これにより、建物設備の運用を極めて効率的に行うことが出来るでしょう。世界中のどこにいても、施設のネットワークから完全にリモートで作業できるようになるのです