本記事は、デジタルツインの作成に何が必要なのかについて週一ペースで説明する連載物の最終回です。本日は、スマートフォンや Beamo Pathfinder を使って、誰でも簡単にデジタルツインを作成できるようになる方法について説明します。
前回のブログ記事では、2D 写真だけでデジタルツインを作成することの難しさと、その困難を Beamo が解決した最初の事例について解説しました。しかし、何事もそうであるように、最初の数回の試みは完璧からは程遠く、ある程度の微調整が随所で必要になりました。Beamo は最終的に 2D 画像をベースにした 3D 再構成の自動化には成功しましたが、広大な空間(特に屋外)を容易にキャプチャできるように最適化できたわけではありませんでした。
サーベイ (測量) 後に各キャプチャポイントの位置を後処理で特定するのは、最適ではないことがわかりました。つまり 2D パノラマの撮影時にその都度位置を特定する必要があります。GPS は屋内では正確ではありませんし、だからといって手動で位置を特定するのは煩雑であり拡張性に欠けるため、独自の屋内マッピングシステムの開発を検討しました。
スマートフォンのみを使用してキャプチャポイントの位置を特定するという斬新なアプローチを採ることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)への道のりをシンプルにしました。スマートフォンのジャイロセンサーと加速度計を使用して、カメラから送られてくる画像を処理し、ユーザーの移動距離と移動方向を理解します。また、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術を応用して、周囲の目立つ特徴を捉え、空間の中を物がどのように動いているのかを理解します。この処理はすべてスマートフォンデバイスの中で行われているため、デジタルツインの作成に必要な計算処理が大幅に削減されます。
私たちは、主に三脚と補助用のアクセサリからなる独自のサーベイ(測量)キットを使用しています。360 度カメラとスマートフォンの位置を一致させることで、それぞれの 2D パノラマの位置に基づいて SLAM データを正確にキャプチャできるようにしています。
SLAM データにより、すべての特徴セットを比較することなく、3D 再構成を処理できます。あたかもパズルのピースの裏側にそのピースの位置が書かれているかのように、ピースをシームレスにはめ込むことができます。
この方法を使用すれば、デジタルツインを処理中に失敗することはありません。また、処理のほとんどが撮影と同時にその場で行われるため、最終結果は数時間や数日どころか数分で得ることができます。
業界のお客様向けに、屋内マッピングのソリューションの柔軟性と安定性を高める必要がありました。また、より広い屋内外の空間をマッピングできるソリューションも必要でした。
そこで Beamo は、Intel Realsense テクノロジーをベースにしたデバイスを開発しました。それが Beamo Pathfinder です。このデバイスは、ポケットにしまえるほどのサイズで、360 度カメラに接続して、スマートフォンの各種センサーの代わりとして機能し、デジタルツイン作成機能を拡張します。Beamo Pathfinder は Beamo アプリケーションを操作するためのデバイスです。精度の向上、消費電力の抑制、2D パノラマの保存容量の拡大が実現します。
Beamo Pathfinder は、立体視の原理で動作します。これは人間の視覚とまったく同じで、ステレオカメラとも呼ばれる 2 つの目を使って、ユーザーがどのように空間を移動しているのか(移動距離、回転など)を理解します。実際、ステレオカメラからの 2 つの視点を比較することで、奥行きを推定することができるため、ナビゲーションや経路追従をより適切に行うことができます。これを実現するために、スマートフォンと同様に、V-SLAM またはビジュアルオドメトリが、デバイスの動きを測定する IMU センサー(ジャイロスコープと加速度計)と連動しています。スマートフォンの機能と比較して、Beamo Pathfinder のカメラとセンサーは、このような処理の実行に特化しているため、結果の精度が高くなっています。
3i 社のハードウェアエンジニアである Taeyeong Moon 氏は、Beamo Pathfinder は空間キャプチャのスタンダードを一新するデバイスだと考えています。
Beamo Pathfinder は、Beamo ソリューションの機能を拡張するコンパクトなデバイスであり、専用の VSLAM トラッカー、デュアルカメラ付きトラッカー、広角視野角、高感度 IMU を備えたデバイスです。これらの特殊なセンサーが搭載されているため、Beamo Pathfinder は、すべての軸における急激な動き、視界の変化、移動速度に対応できる優れた認識力と耐久性を備えています。スマートフォンのみをベースにしたワークフローと比較して、ユーザーはいくつかのステップ(位置調整、インポート時間)を省略でき、Beamo アプリ(キャプチャ中のタグ付けなど)の機能もフル活用できます。
3i 社のハードウェアエンジニアである Taeyeong Moon 氏
実際、スマートフォンの経路追従機能が不要となり、処理の負荷が軽減されるため、性能が高くないデバイスでも使用することができます。Beamo Pathfinder は、ロボット、自動車、ドローンなど、あらゆるキャプチャベクターに取り付けることができるため、よりモジュール式のアプローチを通じて屋内外のマッピングを進めることができます。
デジタルツインの作成には、3D スキャナのような高価で複雑な機器を使用する必要はありません。Beamo の登場によって、スマートフォンと 360 度カメラだけで、誰でも簡単に 3D 空間を作成できるようになりました。
プロセスをさらに簡略化するために、私たちは常にテクノロジーを前進させています。SLAM アルゴリズムの精度を常に向上させながら、さまざまな環境に最適化されたキャプチャソリューションを提供するためのハードウェアも開発しています。また、2D 画像から真の 3D 点群データを抽出できるようになるまで、あともう少しの段階にまで来ています。Beamo により、アクセス性と拡張性に優れた方法を通じてデジタルトランスフォーメーションを推進できるようになります。
私たちと同じように、テクノロジーそのものに感動したり、テクノロジーが人、場所、物との関わり方に与える影響に驚嘆したりする人であれば、Beamo の実用例に興味が湧くはずです。実際、非常に優れたものなのです。